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■ショーの基本構成

こちらの文章はツイスターズ2014の講座内容を文章化したものです。
ところどころ口語的なものや脈絡ない文章が出てきますがご了承下さい。


《ショーの構成》

・起承転結
・序破急

ショーを作るときの方程式には大きく分けて、上の2つがあります。
「起承転結」
は漢詩からなる文章構成の事で分かりやすく言うと
はじめ・続き・変わり・結び
何かが起きて、それの説明が入って、そこに事件や変化があって、オチにたどり着く
まぁ、4コマの基本とされているものです。
が、それはショー構成では基本的に使いません。
なぜなら元々漢詩や短詩という決められた短い枠の中でいかに効率よく伝えるかという為の考え方であり、
制限のない小説やショーなどの芸能にはあまり向いてないからです。
それに、起・承の部分が混ざり合ったり、人に対する説明自体が曖昧なものということや
自分自身がショーに取り入れてみたけど、結局あまり上手く機能しなかった経験があるからです。


そこで出てくるのが
「序破急」
発端、中盤、結末
設定、対立、解決
三幕構成とも言われていて、日本ですと雅楽から始まり文武両芸能ごとによく用いられる言葉です。
起承転結のテンプレが4コマだとすると、
序破急のテンプレはハリウッド映画。

のんびりビーチでくつろいでいると突如エイリアンの攻撃が始まって、
パイロットとして頑張るけど敵は強大、味方や親族との間で衝突が起きて、
でもそれを乗り越えて最後はUSA!USA!

ショーを構成するときにはこの序破急を使って構成を組み立てて行きましょう。
今のバルーンショーの大半は自分のレパートリーから自信のある作品をクライマックスに、
あとは順番に並べていく

A+B+C+ラスト=ショー

となっていることが多いと思いますが、

□+□+□=自分の表現したいこと

と、これは別のコラムの「ショーを作るときに肝要なこと」の中に書いてあるのであとでじっくり考えて見てください。
とりあえず言えることは、「バルーンで人を幸せにする!バルーンで人を笑顔にする!」
なんていう綺麗事の部分じゃなくて、もっと奥にある自分自身の感情や欲、自分が好きなこと。好きなネタ。
そういう中身の面で考えて下さい。

どんなショーをしたいかがはっきりしていないとそもそも構成が建てたれません。

「僕はね、人が楽しむ映画を作りたいんだよ。」

「僕はね、エイリアンが悪者っていうのは昔から嫌いなんだよ。そして今度は子どものための映画を作りたいから子どもとの友情を描きたいな。」
ではその後の構成どうこうという話では無いですからね。

「バルーンで人を幸せにする!バルーンで人を笑顔にする!」というので構成やネタが決まるのであればそれでも良いのですが
自分の中にあるより本当の目的例えば
「とにかく認められたい!バルーンをやっていたら認めてもらえる!」
とか
「日頃はしがないサラリーマン、しかしバルーンがあると俺は無敵のヒーローに慣れる」
とでも、そういう自覚があるか無いかでショーの魅力や、その人自身の面白さの出方が全然違うと思います。
もしくは、自分の闇を自覚することでなりたい自分や、こうあったらいいなという偶像を作ってそれを演じるということも向き合わないと出てこない事だと思います。


さて、実際のバルーンショーの構成の話ですがまずショーで表現したいことがはっきりしたあと、
クライマックスは、まぁ正直それなりに凄いものを出していればいいので各自の中で自信のある、もしくはイベントに関係するネタでもイメージしておいて下さい。

序の部分はパフォーマンスでいうと、
・お客さんを集める
・お客さんに興味を持たせる
・自分の紹介をする
・お客さんと自分との関係性を確立させる

という用途になります。
まずはお客さんと自分との間に強い関係を作らなくてはならない。
ここにはたとえばイヌや花みたいな見たことある、という安心感や分かりやすくバルーンショーですよ~という紹介。
または某ネズミさんや、今流行りのキャッチーなもので興味を持たせる。というような感じになります。
こう言うと、今度からみなさんが同じような構成になりそうですのでとりあえず僕の方の内訳も話しておきます。

僕のショーでは最初に仮面をつけてワシつくってバンッ!ってしてますが、あれは
・僕が一番影響を受けて構成を取り入れさせてもらったダンスパフォーマーのKERAさんという方のオマージュ
・ただマスクが好きだというエゴ
・最初にお客さんとの距離を一定値上側に設定することによって生まれる関係性の固定
・Phantom the Operaの曲の世界観を手前側からショー全体に影響させる
・早さを印象付けることにより、その後のショーでは音楽に合わせて緩やかに作っていても早さが刷り込みで残る
・通常、最初は簡単なものを作るというテンプレショーの冒頭からの否定
・作ったものをステージ上へ残すことによるステージのインパクト、途中から見た人でも興味を惹きつける
などなど、まだまだありますがざっと「序」の部分にこれくらい含まれています。
自分のショーの目的と各構成のイメージが固まったのであれば、あとはそこにバルーン作品を組み入れるだけです。
「ミッキーをやりたいから、何かいい見せ方やアイディア無いかなぁ?」
ではなく、
「最初は◯◯の雰囲気になるように、ここはお客さんを盛り上げるパートにするにはどういう作品を使えば一番効果的かな?」
と逆の方から考えて行けるようになると、ネタが限定されたり、作品は違うけどなんか作り方や演出が同じだなぁと感じるショーにはならないと思います。

また、逆に同じネタを同じような手順でショーに組み込んだとしても、そのネタの方向性や考え方で全く違う別物のショー演目になります。

次に「破」ですが、
ここは構成で言うと中盤で実は一番ショーで大事なところです。序を受けて急に繋げるところ。
急の部分は恐らくそんなに問題は無いと思いますし、序は役割的にある程度限定されてますが、ここはかなり解釈の幅が広いです。

三幕構成の破には「対立・衝突」という役割がありますが1人でやるショーで誰と、何を対立させたらいいのか。
これは序で演じてきた自分に対しての対立です。
もし序は柔らかい雰囲気で作り、急の作品は壮大に作りたいと言うのであれば、
このパートの中でその間の繋ぎを説明し切らなければいけません。

または、柔らかい雰囲気で序を作り、急も柔らかく可愛く構成したいのであれば、中だるみ、飽きが来ないように
破は少しスピーディに、ダーティに、キャラを変えることで序も急もより引き立てることが出来ます。

例によって僕の場合ですが、
・序は仮面でダークな雰囲気なので一転してコミカル
・序がスピード中心のパワー系作品なのでリズムに合わせてアイディア勝負の作品
・「作る」ということ自体に対立させるため、また急のキーになる「割れる」を多用した演出で前後に繋げる
・序で高いところに期待値をおいてきたので、息抜きをさせて急の急速な上昇に備える
・特にお客さんが帰りやすいところなので、急に繋げるために一瞬でも目を離せない演出、ネタ。

という感じを構成に組み込んでいます。
恐らく、ショーの入りとクライマックスはどのパフォーマーでもある程度の自信と安定した演目を持っていると思いますが、
この破のところがイマイチな為にお客さんが帰ったり、飽きたりショー全体の締りが無くなったりしてしまうパターンをよく見ています。
僕はスタートも終わりも数種類のネタを持っていますし、
破のネタは多分数十持っていますが、ショーのイメージと、前後を考えた組み合わせとを考えたら一番悩むのはここのところです。



最後に「急」ですが、これは前述通り
なんか凄いもの持ってくれば良いと思います。作品は別になんでも良いと思いますが、パートの持って行き方を
・盛り上がるようにしたいのか
・拍手で応援してもらえるものにしたいのか
・ドキドキ系で行きたいのか
・感動系で行きたいのか etc...
結局ここでもどの様なショーにしたいのかが重要になります。


作品は別になんでも良いといいつつ、ここはネタ被りを気にして、あの作品はこの人がやってる、あのネタはあの人がやってると
選択肢を狭めてしまって意外とネタに困るのがラストネタだったりします。

まぁ、多分僕自身が鳳凰にペガサスに、ドラゴンに妖精に、グリフォンに、鶴にサンタにいろんなものをやっていうので色んな方から目の上のたんこぶと思われてると思いますが、僕は他の人が同じモチーフを使ったショーをしていても特に何も感じないです。まぁ、もっと考ええば良いのに何でそれ?っていうのは山ほどありますが。
鳳凰とか。鳥とか。

考えた結果それになるなら別に構いませんが、特に考えないけど見た目が良いからとか、
みんなやってるからとか、こっちが先にやったことにしてあの人が真似したと言えばよいか、
とか小さい考え方では小さい作品や小さいショーにしかならないと思います。
僕も後続組にやれ、Syanさんが真似ただの、こっちが先だの散々裏で言われてきましたが、勝手にしてくれぃという感じというか…。

というか、小細工するんじゃなくて自分に確たる思いがあるのであれば堂々と被せればいいんじゃない?
他のジャンルですと、ラストが被るなんて当たり前で同じ演目の中でいかに難易度を上げるか、雰囲気を求めるか、技術で差をつけるかで競っている様に思います。

だ、と言って自由にパクりまくれば良いと言ってるのではなく、一言許可をもらったり、断りを入れるだけで全然違うと思います。
僕は先程のダンスパフォーマーのKERAさんに憧れて仮面を使うことと、構成を真似させて貰うことを了承を得たりした他、他ジャンルのパフォーマーさんの道具や演目、雰囲気や言い回しなど、基本的にはその人に必ず断りを入れるようにしています。
許可を断られる例はほとんどなく、逆に許可をもらった人とは未だに新しいネタのやりとりや演出の相談など良い関係を築けています。

ただ、唯一無二のショーやネタを売りにしてる人もいるので聞いて断られたからと言ってそれ自体を非難はしないで下さいね。

そしてこっそりにしろ、ちゃんと許可をとったにしろやるならちゃんと「真似」をする
真似とは「真に似せる」という言葉通り、表層的なところだけ、美味しいところだけ、簡単なところだけ、言葉上のことだけなど
中途半端に、劣化状態でやるのはもれなくパクリでしか無いと思う。
真似をさせてもらうなら形の面だけではなくて、その人の考えや発想を捉えてみようとすることで、
ホントの意味で自分自身の為に消化吸収できます。


結局、序が何であるかはわかったけどオリジナリティの出し方と、詳しい構成の方法が分からない
というのであれば自分の好きなハリウッド映画を借りてきて、その構成をショーに転化してみたらきっと面白いものが出来ると思います。

(2014.6.30)
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